「アンチエイジング」というと美容関係の言葉に思われがちかもしれませんが、本来の意味は文字通りの抗加齢(抗老化)です。どうしても「加齢」と共に「老化」がついてきがちです。「加齢」は止めることはできませんが「老化」は日頃のケアによって大きく抑えることができます。健康的な生活習慣を維持することや、健康寿命を延ばすことができます。そして実際に実年齢より若く見られる人、老いて見られる人が現実的にはいらっしゃいます。
「老化」とは、そしてその「原因」と「対策」に関して天昌堂の考え方を書いてみたいと思います。
老化の説
老化の原因には、遺伝子や環境要因など複数の説が存在します。以下に代表的な老化の説をいくつか挙げてみます。
ミトコンドリア説
ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを産生する重要な役割を担っていますが、その過程で発生する活性酸素が細胞の損傷や老化を引き起こすとする説。
テロメア説
染色体の末端にあるテロメアは、細胞分裂のたびに短くなり、細胞が老化していくとする説。
糖化ストレス説
血糖値が高い状態が続くことで、タンパク質などが結合して糖化物質が生成され、細胞の損傷や老化を引き起こすとする説。
炎症説
慢性的な炎症が、老化や疾患の原因になるとする説。
遺伝子説
老化には遺伝子の影響があるとする説。
これらの説は、一つだけでなく、複数の説が同時に影響していることが多く、老化のメカニズムはまだ完全に解明されていないというのが現在の状況です。
したがって「アンチエイジング」を考える際にはかなり幅広い視野を持って取り組むことが必要です。
目に見える「老化」髪 しみ しわ たるみ くすみ
「人間は見た目じゃない」なんてことは言われていますが、外見が若い(よい)方が人生にとってメリットが大きいのは明らかです。カルフォルニア大学の研究では「初対面の印象」は視覚情報(見た目、表情、しぐさ)が55%、言語情報(話の内容)が7%、聴覚情報(声の質や大きさ)が38%の割合で決まるそうです。
他人への印象だけではなく、アトピー疾患で悩む方などは治療が進み、肌の状態がよくなるにつれてどんどんと活動的に、表情が明るくなっていきます。
では、外見は何で決まるかというと「髪」と「肌の状態」の影響が大きいです。
頭髪の量
男性も女性も年を取ると髪の毛が薄く少なくなりがちです。
頭髪への栄養は、頭皮の毛細血管を通して送られますが、加齢にともない毛細血管が老化することで、栄養が十分に届かなくなります。それによって髪の毛が栄養不足となり、細くなってきます。
(塩化カルプロニウム(商品名:カロヤン)などは血管拡張作用があり、塗布することで頭皮の血流を良くするための医薬品です。)
血流が悪く髪の毛に栄養が行き届いていないパターンと、食事で十分な栄養が取れていないパターンがあります。
喫煙などで血管が収縮したり、脂肪分の多い食事ばかりで血行が悪くなったりすると、髪の毛に十分な栄養が行き届かず、頭髪の成長の妨げとなってしまいます。
不足することで髪の毛の成長に影響する栄養素は、鉄分や亜鉛、ビオチン、ビタミンB12などが挙げられますがこれらは貧血の女性にも多く見られる栄養欠乏状態です。ダイエットのために過度な食事制限をすることで陥りやすいです。
頭髪量は毛細血管の血流量が低くなっているサインでもありますので塗布剤と共に全身の血流を改善していくことが全身的な抗老化につながることと考えています。
円形脱毛症
円形に髪の毛が抜けることですが、バサッと一度にたくさん抜ける人がいます。
この場合、原因は自己免疫疾患です。免疫の狂いによって自身の免疫が自身の毛根を攻撃してしまうことによって起こります。
何故、部分的、円形に起こるのかということは不明です。背景に膠原病や甲状腺疾患、感染症を引き金にした自己免疫疾患等で起こることがあります。
病院治療ではステロイド製剤等を使用することがありますが当店では免疫を正常な状態にするサプリメント等を組み合わせていきます。
頭皮のフケ
フケは脂漏性湿疹、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、その他アレルギー、皮膚の乾燥etc、さまざまな原因で起こりますし、合わないシャンプーで出ている場合もあります。
いずれも痒みの原因となり、掻くことでフケは出てきます。原因が推測できるような基礎疾患がある場合はその改善、そして根治治療と共に痒みを抑えることが必要となります。
肌の状態 しみ しわ たるみ くすみ
多くの人は意識していませんが「皮膚」は「臓器」の一つです。心臓や肺、肝臓や腎臓と同じ「臓器」です。肌荒れや皮膚の色素の沈着などは多くの方がご存じのように紫外線などでも起こりますが内臓疾患の兆候が皮膚にサインとしてあらわれてくることがあります。
例えば肝臓や腎臓が悪い人で皮膚が痒くなるケースがあります。また、アトピー性皮膚炎や乾癬だけでなく、糖尿病などでも皮膚が痒くなることがあります。皮膚は内面を映す鏡であり人は本能的に「皮膚の外見」でその人の「魅力量」を感じているのではないでしょうか。
細胞は老化したり、外からの刺激によって酸化ダメージを受けています。これに対抗するのが抗酸化力です。この抗酸化力はヒトによって違いがあり、「見た目が若い人」は「抗酸化力が強い人」という事になります。
抗酸化力は抗酸化力の強い食品を日頃から摂取することや体内の抗酸化を担っている肝臓のケアによって得ることができます。
紫外線対策は必須
紫外線が肌に悪いということは有名です。紫外線はUVA(長波長)、UVB(中波長)、UVC(短波長)の3種類に分けられます。
UVBの多くとUVCはオゾン層によって吸収されて地表には届かないので肌に影響を与えるのはUVAとUVBの一部です。これらの紫外線は皮膚の赤みを増す、しみやしわを増やす、浴びすぎると発がん作用まであります。(紫外線の波長は短い方が人体への影響が強く、環境破壊によりオゾン層が破壊されてUVCが地表に届くようになると、発がん作用や失明の危険性が高まります。)
紫外線は健康への様々な悪影響が確認されており、年間を通して紫外線量の多いオーストラリアでは小学校でサングラスの着用が義務付けられたりしています。
また、紫外線の影響はすぐに出るわけではなく、青年期までに浴びた紫外線のダメージが30代や40代になってしみ、しわ、たるみとしてあらわれると言われています。大人になってから紫外線対策はさらに10年後のしみ、しわたるみとなって現れます。
目に見えない老化 免疫 脳
免疫
新型コロナウイルスが2023年5月8日、5類感染症にグレードダウンされました。新型コロナウイルスの死亡率(死亡者数/感染者数)を見てみると30代では0.1%なのに対して80代以上では11%以上であることが分かりました(2023年5月時点)。これは高齢者の多くが基礎疾患を抱えていることに加え、免疫機能の老化が原因ともみられています。
免疫では様々な免疫細胞が強調して働き、病原体を排除するとともに自分自身の身体を攻撃しないようなバランスがとられています。
人の身体では「自然免疫」「獲得免疫」の二つのシステムが連携して働きます。自然免疫とは体内に侵入してきた病原体に対してマクロファージ、樹状細胞、好中球と呼ばれる食細胞が病原体を飲み込んで分解します。時間差で働く獲得免疫はT細胞やB細胞と呼ばれる細胞が侵入してきた病原体に対してピンポイントで働く免疫です。
T細胞やB細胞がまだであったことのない病原体に対応するためには樹状細胞などの刺激が必要になるために少し時間がかかります。このT細胞の成熟は胸腺と呼ばれる臓器で行われるのですが、胸腺は年齢と共に萎縮してしまいます。
萎縮は20代後半からはじまり,大きさは40で約50%,70で10%以下になるとされています。細胞の衰えはB細胞にも影響し、獲得免疫全体の機能低下に結びつきます。さらに自然免疫の機能低下も相まって,「感染症にかかりやすく重症化しやすい」「異常な免疫反応がおきやすい」ワクチン接種の効果が弱い」などにつながります。
脳
人体の司令塔である脳の老化は全身のあらゆる機能に影響します。
脳の老化の原因は大きく分けて2つあり「血流の低下に伴う栄養分供給量の低下」と「神経細胞の変性」があげられます。
下のグラフは20代から80代にかけて脳の血流量がどのように変化するのかを表したグラフです。男女ともに年齢を重ねるにつれて脳の血流量が低下していくことが分かります。
また、脳神経細胞の突起の減少が少なくなることにより周囲の神経細胞との連携が低下すること、アミロイドβというたんぱく質が神経細胞の周りにまとわりつき、電気信号が流れにくくなること、タウタンパク質という物質が神経細胞内に溜まり、細胞死が起きてしまう事などが見られます。
まず、脳の萎縮は20代から始まっているという事よりアンチエイジングを考えるなら早い段階からの対策が効果的であることが分かります。また、血流の改善と異物タンパクの除去が必要な点から血流と免疫の必要性が分かります。
慢性炎症とAGEs
炎症とは赤み、発熱、腫れ、疼痛を持つ状態です。解りやすいところで言うと蚊に刺されたとき、蚊の唾液に入っている物質に免疫が反応して排除しようとした結果起こるもので有害なものではなく「治療のプロセス」「免疫システム」の一つです。傷ができた時に直そうとする反応も炎症反応です。
こういった一過性の物は「急性炎症」と呼ばれ、風邪をひいたときや細菌感染した時も同様の反応が全身的に起こり、身体を治そうとします。
一方、「慢性炎症」とは原因となる物を長い間排除できなかったり、免疫系のアンバランス、加齢などの理由で炎症が治まらなくなったりする時に起こるもので自覚症状がほとんどないという特徴があります。
この慢性炎症というくすぶりは放っておくと様々な重大な疾患につながっていくという事が分かっています。
慢性炎症を消すためには「炎症の原因となる物を減らす」、という方法があります。「炎症の原因となる物」は細菌やウイルス等、様々ありますがそのうちの一つに発生を避けることが難しい老化細胞があります。
全身の細胞1つ1つにも寿命があり、細胞分裂が出来なくなった細胞はその場で動きを停止します。その間、様々な炎症物質を放出するので周りの細胞も炎症の影響を受け、一気に疾患につながっていったりシミやしわの原因となったりします。
いずれこの老化した細胞は免疫細胞の分解を受け、消えてなくなるのですが免疫力がしっかりしていないといつまでも老化した細胞が居残り、だらだらと炎症物質を流している状態になります。慢性炎症の原因物質を除去するものは免疫ですので、免疫力をしっかりとさせておくことが「老化を広げない」ことにつながります。
慢性炎症の原因物質として近年ではAGEs(終末糖化産物)と呼ばれる物質が問題視されています。糖類がタンパク質などと結合してタンパク質が本来の働きが出来なくなったものを指し示す言葉です。このときの反応を糖化反応(メイラード反応)といいます。
砂糖の入った卵焼きは焦げやすいという事はご存じでしょうか?卵焼きの焦げは砂糖と卵のタンパク質がフライパンの熱により結合しコゲとなります。そしてそのコゲたタンパク質は元に戻ることも砂糖の部分を切り離すこともできません。
人の身体でも同じように摂取した砂糖と体内にあるタンパク質、そして体温という低温でも、いくらかのタンパク質はコゲてしまい、機能を失ってしまいます。
メイラード反応したタンパク質は生体にとっては除去しなくてはいけないタンパク質になりますので免疫反応が働き、炎症を起こします。
そして、このメイラード反応は砂糖の濃度が濃くなればなるほど起こりやすくなることが分かっています。
つまり、普段食事から過剰な糖分を摂取している人は体内でのメイラード反応が進み、タンパク質が本来必要な機能を発揮できない+炎症を起こす異物となる という事です。
慢性炎症の第一歩は過剰な糖類を身体に入れないことではないでしょうか。
(糖尿病などの診断に使うHbA1C(ヘモグロビンエーワンシー)は糖化した赤血球の割合です。この値が6.5%以上で糖尿病の診断を受けることとなります。)
抗老化はミトコンドリアが握っている?
私たちの細胞の中にはDNAが入っている核、タンパク質を作るリボソーム、ホルモン分泌などに関わるゴルジ体など様々な細胞小器官と呼ばれる小器官があります。ミトコンドリアは細胞小器官の一つで主に酸素を消費してATPというエネルギー物質を作成する小器官で、特にエネルギーを必要とする脳、心臓、筋肉などには多く含まれています。
我々の身体は常に呼吸と酸素を必要としています。じつは酸素が必要なのは細胞の中のミトコンドリアが必要としているからで、そのために我々はいっときも呼吸を止めることができないのです。
ミトコンドリアが生命活動に必要なエネルギーであるATPを作るためには、酸素というものは大きなエネルギーを生み出せる物質である一方、高濃度になるとすべてをサビさせる毒として働いてしまうという一面があります。
ミトコンドリアが酸素を使用してATPを産生するときにはクエン酸回路(TAC回路)、電子伝達系と呼ばれる反応経路をたどってATPを産生します。その時にどうしても反応性の高い酸素、活性酸素というものが生み出されてしまいます。
ミトコンドリアは活性酸素に常にさらされている細胞小器官と言えますので、ATPを産生しつつ自分自身を活性酸素から守るという物質を蓄えています。
それが有名なコエンザイムQ10と呼ばれるものです。
老化の原因の一つとしてミトコンドリアの機能不全の蓄積が考えられています。
ミトコンドリアは常に活性酸素に晒されています。加齢によりだんだんと傷み、本来の機能を発揮できなくなってきます。糖尿病のラットを使った観察などでは明らかに心臓や腎臓にミトコンドリアの形態異常が見られています。
ミトコンドリアをしっかりと働かせつつ、保護することが老化を遠ざけるための一つの手段であると思います。
睡眠時間は最も身近なアンチエイジングタイム
寝不足で肌が荒れたり吹き出物が出来たりという経験はある方が多いと思います。
人の身体は毎日のように紫外線や活性酸素に晒されて生きています。当然、細胞はダメージを受けているので修復する時間が必要です。
寝ている間(脳がしっかりと休息をとっている間)には成長ホルモンが脳から分泌されます。成長ホルモンは細胞の修復に必要なホルモンです。成長ホルモンは深い睡眠時に分泌されているようです。
つまり、分泌には質の良い睡眠であるという事が必要のようです。質が大切であると言っても睡眠時間は7~8時間くらいは確保したいものです。
老化とつきあうのも一つの手
ドイツの心理学者バルテスはあるときにポーランドの有名なピアニスト、アルトゥール・ルービンシュタイン(1887~1982)が80歳の時に「どうすればいつまでも素晴らしいピアニストでいられるのか?」と聞いたそうです。
加齢に伴って今まで通りの演奏や早いテンポの曲は無理になります。そこでルービンシュタインは演奏する曲目を減らし(選択)、選択した曲に絞って練習を繰り返し行う(最適化)。演奏のスピードが落ちたことに気づかれないように時々テンポを変化させてアレンジしながら演奏する(補償)ということをしていたそうです。
できないことを無理してやろうとせずに、できることを選び、昔より時間をかけて、杖や老眼鏡も必要なら使用して(補償)、人生を楽しむことはできるはずです。
また、「老い」に対して適応できないと「何をやっても無駄だ」といった無力感に襲われ、老人性うつになってしまう可能性もあります。
天昌堂では、長生きを楽しみ、 人生を全うするために自分自身で健康を守る 「セルフメディケーション」を推奨すると共に漢方薬 自然薬 高機能食品での補いを提案し、将来の健康な生活をお届けするというのがコンセプトです。
アンチエイジングを提案すると同時に、エイジングを楽しめる提案を行ってまいります。