正常な性機能を有する夫婦では避妊しなければ1年間でその80%、2年間では90%が妊娠することが分かっています。「挙児を希望し通常の性生活を送りながら、1年以上経過しても妊娠が成立しない夫婦」が不妊症と診断されます。
おそらくココを見ているのは不妊・不育でお悩みの女性の方だと思います。ところで、今、何歳でしょうか?
不妊の頻度は25歳~29歳では8.9%、30~34歳では14.6%、35~39歳21.9%、40~44歳では28.9%だそうです。高齢になればなるほど自然妊娠することは難しくなっていくことは分かります。
一方、高齢(35歳以上の出産が高齢出産と言われることが多い)になっても自然妊娠・出産される方はいらっしゃいます。
「妊娠する夫婦」と「妊娠できない夫婦」の違いはどこにあるのでしょうか。
原因と病院治療、当店での考え方と生活養生アドバイスの一部をご紹介したいと思います。

不妊と年齢

漢方薬の世界では女性は7の倍数の年齢で節目を迎えると言われています(ちなみに男性は8の倍数です)。

7歳:歯が生え代わり、髪が長くなる
14歳:初潮を迎え、子供が産めるようになる
21歳:女性の体が出来上がる
28歳:女性として最も成熟する
35歳:女性として老化が始まる
42歳:白髪が目立ち始める
49歳:閉経する

この考えは二千年も前に考えられたものですが現代の人の身体にも当てはまります。実際に現代医学的に女性の閉経は50歳と言われておりますので2000年前とほとんど変わりはありません。
病院で行う不妊治療のうちの一つ、体外受精胚移植が行われるようになって40年以上がたちますが、その体外受精胚移植の着床率でさえ女性の高齢になるほど妊娠率が低下し、流産率が上昇することが分かっています。
以上の事より「妊娠」を考えるうえで「年齢」はどうしても考慮しなければいけない数字です。
女性の体の中では卵子が減数分裂という普通の体細胞とは違った分裂方法で細胞分裂を起こし、卵子を作っています。卵子を調べてみると染色体異常を持っている卵子が若い人でも結構あり受精しても着床に至らないケースが多々あります。その割合は女性の加齢とともに上がり、40歳になると8割近くの卵子が何らかの染色体異常というものを持っています。これが受精しても妊娠に至らない確率を上げています。
(男性の精子にも同じ現象が見られ、20~24歳では2.8%の精子に染色体異常があり、45歳以上で13.6%に上がります)。

不妊と遺伝・体質

どうしても人それぞれ体質というものがあります。体質というものは遺伝の影響が大きいので家族や親戚のことを見てみてください。
「親戚に高齢出産の経験者がいる、妊娠しやすく子だくさんの女性がいる」
「不妊で悩んだ女性が親戚にいない」
「自己免疫疾患、婦人病、精神疾患に罹った人が親戚にいない」
「自分は小さいころから元気で活発であった」
こういった方は天性の才能はお持ちだと思いますがそうでない方もいらっしゃいます(これを読んでいる方はそうでない方の方が多いでしょう)。
そうでないかたは自分自身で作り上げている生活習慣・生活養生を整えることで妊娠する確率をぐっと上げることができます。生活習慣は自分自身で作り上げたものです。自分自身で変えられるはずです。

不妊を加速させる生活習慣

タバコを吸う
お酒を飲む機会が多い
1日3杯以上のコーヒーを飲む
人間関係のストレスが多い
眠っても疲れが取れない、集中力が続かない、やる気が出ない
1日3食の生活をしていない
甘いものをよく食べる、量も多い
運動をほとんどしない

不妊を加速させる体質

生理周期が不安定
生理痛がひどい、毎回痛み止めを飲んでいる、生理の時に頭痛や吐き気もある
経血の量が増えてきた、経血に大きな血の塊がある、婦人科疾患の疾病歴がある
下腹部周辺が冷えている
適正体重ではない(肥満気味もしくは痩せすぎ)
(BMI = 体重kg ÷ (身長m)2 適正体重 = (身長m)2 ×22 適正BMI=18.5~25未満)

不妊を加速させる生活・体質(男性)

子供のころおたふく風邪などで高熱を出したことがある
睾丸が小さい、スポーツなどで打撲したことがある
ぴったりしたパンツやズボンを履いている
性感染症に罹ったことがある
残業・出張・休日出勤が多い

不妊を改善させる生活養生

基本的な話ですが正しい量の食事・運動・睡眠をとりストレスを遠ざけるというのが基本になります。

不妊を改善させる食事

高タンパク質低糖質

妊娠するためにはホルモンバランスを崩さない身体が必要です。近年の女性はダイエット志向にあるせいか痩せすぎの女性が多い傾向にあります。見た目には美しいかもしれませんが健康という側面から見ると栄養が不足しているパターンも多々あります。太っている人は栄養が足りているというよりは糖質と脂質の取りすぎによる栄養不足です。近年の食生活ではどうしても糖質・脂質に偏りがちですので意識して高タンパク質低糖質の食事をとる必要があります。

女性に不足しがちな3大栄養素

カルシウム・・・骨や歯を作るだけではなく筋肉や神経の働きを保つ役割もあります。
鉄分・・・全身に酸素を運ぶ赤血球の材料となります。不足すると鉄欠乏性貧血などが起こります。女性は男性より生理などで出血の機会が多いので意識して摂取してください。
葉酸・・・胎児の成長を助ける、赤血球の形成を助けるというビタミンです。

血、肉、骨の材料と言われるものをしっかりと摂取する必要があります。

食事でも体を冷やさない食べ方に

冷えは様々な不調を引き起こすうえに妊活をしている人にとっては大敵です。水分を取るなら暖かいものを、また、昼の体温をしっかり維持するためにも朝食をとるようにしてください。

不妊を改善させる運動

運動の目的は第一に「冷え」の解消です。筋肉量を増やして体温を上げる(筋肉量を維持して体温を下げないようにする)。また、筋肉の増加、体温の上昇で自然と代謝が高まって血流がよくなります。
血液の流れをよくして卵巣に栄養を届けることが目的ですので過度な運動は禁物です。あまりに激しい運動は交感神経を活性化させて排卵を抑制してしまうこともあります。
軽いストレッチとウォーキング、軽い筋トレ程度の運動を心がけてください。血流を改善させるのが目的ですからヨガなど、とても効果的です。
運動量は疲れない程度に行っていただければと思います、また、軽い運動でもあまりにも疲れてしまう方は根本的な体力低下の状態であったり自律神経失調症、うつ、橋本病などの病気も疑う必要が出てきたりします。この場合は妊活の前に病気や症状の治療、基礎体力をつけるところから始める必要があります。

不妊を改善させる睡眠

近年は女性も働き、家計を支えるための収入を得ている方、キャリアアップを考えバリバリ働いている方も珍しくはありません。仕事のことで頭がいっぱい、周囲の期待と信頼が大きい、責任感が強い(仕事に対しても家事も対しても)、ノルマに追われているという方はどうしても就寝が遅くなり、睡眠時間が十分に取れていない人が多いです。
妊娠を考えるならば「日の入りと共に就寝し日の出と共に起きる」という生活が理想的ではあります。現実的なところそれは難しいですが、就寝が23時を越えているような人は「不妊を改善させる睡眠」には程遠いので環境を改善していく必要が出てきます。
睡眠時間を取ることは妊娠に必要なホルモンや不妊の原因になるアンバランスを修正する働きがあります。睡眠中は成長ホルモンが出る時間帯です。成長ホルモンは骨や筋肉の成長、細胞の修復、免疫のバランスをとるという作用があります。このホルモンは睡眠に入った瞬間に出始めるわけではなく、深い睡眠に入っている時間で出ますのでどうしてもある程度の長い睡眠時間の確保が必要になります。
21時にはすべての寝る準備を済ませて布団に入りたいところです。質の良い睡眠を促すメラトニンは光を浴びることで出なくなるので睡眠前のスマートフォンも避けましょう。

不妊を加速させるストレス

ストレスというと人間関係を中心としたストレスを思い浮かべますが他にも様々なストレスが生活の中には存在します。大きく分けて心のストレスと身体のストレスと分けられます。

心のストレス・・・パートナーとの関係、将来の不安、義実家との関係、職場の人間関係、周囲の環境
身体のストレス・・・睡眠不足、通勤ラッシュ、不規則な生活、SNS依存、食生活の乱れ、過労(労働)

ストレスを感じると副腎皮質からストレスに対応するホルモンであるコルチゾールが分泌され、脳(視床下部)に作用し、ストレスに対する心の防御反応を示します。排卵を司る部分もこの近くにあり、コルチゾールの影響を受けてしまいます。ストレスが多いと排卵が遅れたり生理周期が乱れたりします。
ストレスを感じているような環境では身体は自然と「妊娠している場合ではない」と働いてしまうのです。
「家にじっとしているのが苦痛である」という方もいらっしゃいますし、「仕事をしているときの方がストレスを解消できる」という方もいらっしゃいます。もちろんそういう方に対して絶対安静や辞職を勧めることはありませんが、「疲れない程度」にしていただき「睡眠時間をしっかり確保する」ことは必要だと思っております。

男性不妊に関して

精液は精子、精嚢液、前立腺液の3種類の混合物でできています。このどれかに何らかの異常があると精子の状態が悪い、少ないなどの原因でなかなか妊娠できないという結果となります。病院での診断は泌尿器科で相談することをお勧めします。

男性不妊の原因は大きく4つに分けられます。

・造精機能障害・・・男性不妊の90%を占める。過去におたふく風邪に罹ったことがあることや炎症等が今も続いていることが原因であることがあるが、多くの場合は原因不明の造精機能障害。
・精子輸送路通過障害・・・精管の欠損や精嚢、精巣上体の発育不全。後天的には炎症後の精管閉塞等。
・副性器障害・・・精嚢、前立腺の炎症による精子の運動能の低下。
・性機能不全・・・勃起不全、射精時の精子が膀胱に逆流する逆行性射精など。

病院治療では性機能障害にはED治療薬、精液の状態が悪い場合にはビタミン剤や漢方薬、無精子症には高度な手術(精巣精子採取、精管再建術)等が行われます。
明らかな無精子症でない限りは食養生や生活指導、漢方薬でかなり改善ができます。
当店でも禁煙とアルコール量を控えること、ビタミン、ミネラル剤や漢方薬をその方の状態に合わせて処方します。

不妊の原因(西洋医学的視点)

不妊の原因は様々です。男女別で考えると50%が女性因子によるもの、25%が男性因子によるもの、25%は原因不明です。
女性因子の内訳をみると子宮因子、排卵障害、卵管障害、黄体機能不全など様々な要因が同じぐらいの割合で絡んでいます。
不妊の原因は本当に原因が様々なのでピンポイントで探し当てたい場合は不妊クリニック等で診察を受けることをお勧めします。当店ではできることは身体全体のバランスを取り、妊娠できる体づくり、着床できる体づくりを目指してサプリメントをお勧めしたり生活養生のアドバイスをさせていただくことになります。
体外受精治療をお考えの方などは不妊クリニックの治療と並行してご相談にいらしてください。仮に体外受精を行う場合でも受精卵が着床するための「状態のよい子宮」はご本人が用意していただく必要があります。

不妊の原因例 抗リン脂質抗体

抗リン脂質抗体というのは自己抗体の一つでアレルギー体質の人にありがちなものです。これがあると血栓症、血小板減少症、不育症などになりやすくなります。
リン脂質は細胞を形成する物質ですが、これに対して免疫が働き、排除しようとする「免疫の狂い」に分類される状態を作ってしまいます。受精卵に免疫が働いてしまうのと同時に胎児に栄養を与える血管を詰まらせる血栓を作ってしまうことが分かっています。
病院治療では免疫全体を抑制し自己抗体を減らす目的でステロイド、血液の流れをよくするためにヘパリンや低用量のアスピリンが不妊治療で使われていました。今ではステロイドは催奇形性があることを考慮して使われなくなり、ヘパリン+低用量アスピリンの治療が一般的です。

不妊の原因例 黄体機能不全

女性の体は卵子を放出すると黄体というものが出来上がります。黄体は黄体ホルモン(プロゲステロン)を作り、子宮内膜の厚みを維持するという働きがあります。黄体ホルモンが無くなると生理が起こります。
受精卵着床時には子宮内膜が厚くなっている必要がありますが、何らかの原因で黄体ホルモンが少ない人、維持できない人がいます。
病院治療では黄体ホルモン補充療法が最もよく行われています。

不妊の原因例 甲状腺疾患

甲状腺は甲状腺ホルモン(T3、T4)と呼ばれる代謝や成長に必要なホルモンを産生しています(詳しくは甲状腺疾患のページをご覧ください)。
甲状腺という臓器は胎児では10週目頃より出現し、甲状腺ホルモンを作るようになります。それまでは母体の甲状腺ホルモンが胎児の成長と代謝に関与していると考えられ、妊娠初期の母体は普段よりたくさんの甲状腺ホルモンが必要になり、生産しています。甲状腺ホルモン低下症を起こす橋本病という自己免疫疾患(TPO抗体という自己抗体の有無で診断されます)がある人は非妊娠時より多くの甲状腺ホルモン補充が必要になります。また、橋本病を発症していなくても抗TPO抗体がある人は流産率が2~3倍高くなることもわかっています。
一方、バセドウ病は甲状腺ホルモンが作られすぎてしまう自己免疫疾患ですが甲状腺ホルモンコントロールが不十分だと高濃度の甲状腺ホルモンが胎児の脳に行き、甲状腺機能低下症の子供が生まれてくる可能性が高くなります(過剰の甲状腺ホルモンが胎児に作用することによって胎児が自分で甲状腺ホルモンを作る機能が発達しない)。
※不妊クリニックでは母体のT3、T4を測ることもしますが、T3、T4をコントロールしているTSHというホルモン濃度を測定し検討することが多いです。

不妊と免疫

お腹の中の赤ちゃんは遺伝学的に母体とは別の生き物で「非自己」の存在になります。ヒトはもともと病気の原因となる病原体など、非自己を体から排除するシステムとして免疫力というものを持っています。受精卵が子宮の中で着床し、成長していくためにはその受精卵を受け入れることを可能とする免疫機能の調整機構が必要です。数ある免疫機構の中でも特にNK細胞とT細胞が重要な役割をしているという事が分かっています。
NK細胞は子宮内に多く存在しており、子宮内の感染抑制や古くなった細胞の破壊、サイトカインの放出など新陳代謝に必要な働きをしています。妊娠時には細胞破壊の特性を弱め、サイトカイン生産にシフトすることが分かっています。このシフトがうまくいかない人が流産群で高値であることが分かっています。
また、Th1という免疫細胞は細胞性免疫を増強し、妊娠成立には有害な作用を持つことが分かっています。Th1はTh2とTregというT細胞によって抑制され、妊娠成立時にはTh1/Th2比が小さくなることが分かっています。つまり、妊娠時はTh2優位になる必要があり、Th1優位の状態では胎児への寛容が弱く、流産につながるということです。Th1/Th2比が10.3以上になるとタクロリムス製剤という免疫抑制剤でTh1/Th2比を下げる治療が不妊クリニックなどでは行われます。

不妊に悩む方へ当店の取り組み

高齢(35歳以上の出産が高齢出産と言われることが多い)になっても自然妊娠・出産される方はいらっしゃいます。
「妊娠する夫婦」と「妊娠できない夫婦」の違いは「妊娠する夫婦は疲れきっていない」ことが見られます。
比較的、若く見える、白髪が少ない、血色がよい、気が充実して元気が良いという共通点があります。
子供を授かるという事は体力的に余裕がないとできないことなので当然のことかもしれません。
前述した食事・運動・睡眠・ストレスを完全にカバーできれば問題無いのですがなかなかやらなくてはいけないことが多い、時間に余裕のない方々では難しいというのが現実的です。
不妊クリニックや病院治療でも妊活はできますが、前述したステロイド製剤やタクロリムス製剤には催奇形性の可能性が懸念されています。体外受精胚移植を検討される方も、できれば自然妊娠で授かりたいと思っている方がほとんどではないでしょうか?
また、体外受精胚移植を行うにあたっても子宮内膜の状態が整っていないと着床しない、流産につながります。
(流産には本人の気づいていないところで起きている可能性のある「化学流産」というものもあります。「妊娠」とは画像で胎嚢が確認できることを示す言葉ですが、受精卵が確認できる大きさになる迄には少し時間がかかります。その前に流産してしまうことを化学流産と言います。)

当店では生活養生の相談に加え妊活の基盤となる血流、栄養(ミネラル)、免疫をサポートする漢方薬やサプリメント等を組み合わせてご相談に乗らせていただきます。
これから妊活を始める人、不妊で悩み始めた人、不妊クリニックでの治療を検討の人、治療中の人、ぜひご相談ください。当店には人の身体の基盤を立て直す技術・知識・商品があります。